新作
なんやかんやでかなりかかりましたが、ようやく形になってきました。
名前を「薄月(うすつき)」にします。
雲がかかったほんのり照る月
まだらに出た白かびが、雲がかかった月の趣からの命名です。
また、生石高原はススキ原で有名。
ススキは漢字で「薄」。ダブルミーニングです。
出来てすぐはミルクと酸、白カビの仄かな苦味を感じるあまりクセのない味。
周りのカビが熟成を進め、時間が経つほどやわらかくなり、山羊独特のクセとピリッとする辛味が出て味が強くなります。
まだまだ発展途上なので、ロットごとに多少のブレがあります。
その為、ロットごとの味を確認してからの出荷になります。
種付けも一巡し、乳量も減ってきているこの時期に新作ということであまり数がありません。
興味がある方はお問い合わせください。
薄月
出荷時80g以上
製造から20日くらいから出荷
賞味期限 製造日から50日
生山羊乳、和歌山産海塩
余白好き
今、色んなチーズを試作してます。
なんとなくの方角だけ決めて進んでいると色んなものをができてきます。
駄作・珍品・同じものが再現できない幻の逸品・もう一歩な残念感が漂った品、等々…
基本は駄作です。残念ながら
本来なら既にある有名どころのチーズを目標にするのが良いのでしょうが、そうするとどうしてもそっちに引きずられてしまうので、進みたい方角だけを決めてやってます。
色々試していると自分の嗜好性が色濃く出て来て面白いなぁ、と思います。
僕自身は、完成し、かっちりしたものをあまり好まない感じです。
それよりは、フレや鈴のように、食べる人、作る人が色々アレンジできたり、イメージを膨らませて新たなものになったりする素材としてのチーズが結構お好みみたいです。
生き物を飼っていると想定外なことばかりです。決め打ちするとイライラすることばかりになるのでその場に応じてやってます。
加工も同じくで、ミルクにするのも、ヨーグルト作るのも、チーズ作るのも、毎度毎度ドキドキです。
前にも書いたように、チーズで目指すところは、ミルクの優しさを感じられるものです。
結構その事を大事にしてます。
そして、作っていてオモロいかオモロないかが基準になっています。
もう少し試作は続きます。きっちりせずにオモロがりながら進んでいきます。
日本一?
加工所は旧生石小学校の2階の理科室を改造して使ってます。
僕自身も地域の加工組合のすすきの里加工組合に所属して小学校を使わせてもらっています。
生乳を殺菌するパスタンクは50リットルのものです。
1回の乳処理は50リットルまで。
恐らく乳処理業の免許を持っている中では日本一小さい処理能力だと思います。
狭い中に部屋を小分けにして発酵室やらなんやらを詰め込んでいますが案外使い勝手が良いのが自慢です。
因みに加工室は見学不可です。
ここは作業するだけの場所なので直接来ても何も売っていません。
突然の訪問はご遠慮ください。
なお、正面玄関からは加工所へは行けません。
決して1階を訪ねないようにお願いいたします。
1階は別の加工をやっているためご迷惑がかかります。
よろしくお願いします。
乳製品の個別販売の方法を考え中です。あんまりお金をかけてもしょうがないので細々と始めると思います。
決まりましたらFBにてお知らせします。
ミルクは誰のもの?
ミルクは子どもが産まれることで出るようにます。
哺乳類はみんな一緒。
ミルクは子どもへの初めての唯一の栄養です。そしてミルクの中には子どもが丈夫に育つ大切な成分がたくさん入っています。
我々はそのお裾分けをもらっています。
ウチでは加工品の製造は4月の下旬から始まります。
それまでのミルクは全部仔やぎのもの。
3月のミルクは一番良いのですが、
お裾分けをいただく身分なのでワガママは言えません。
生まれてから1ヶ月迄は飲む量がどんどん増えます。
1ヶ月を過ぎた頃から飲む量を徐々に減らしていき、50~60日くらいで離乳します。
加工品は飲む量が減る頃から少しずつ始めるのです。
ミルクは子どものもの。
急がずゆっくり始まります。
育ての親、育ち中
出産が始まりました。
飼っているザーネン種は季節繁殖で、春にしか子どもを産みません。
しかもウチはオスをレンタルしている為、出産が集中します。
この時期だけ朝から夕方迄ずっと山羊と一緒にいます。
仔やぎの育て方は色々あります。
生まれてからずっと親と一緒のやり方、1週間から1ヶ月まで親につけるやり方、生まれてすぐ親から離し、人間が哺乳するやり方、などなど、飼っている方の考え方によります。
ウチは完全分離で人間が哺乳するやり方です。
可哀想に感じる方もいるとは思いますが、山羊で暮らす為にこの方法にしています。
メリットは
①人間に慣れる。
②哺乳量を管理できる。
③体調を把握できる。
山羊は産まれて早いと3ヶ月で妊娠できる身体になります。
ウチは秋に種付けをし、来春に出産します。
出産時に身体が小さいとお産がしんどくなります。
元来、親の乳だけだと出産できるだけ身体を大きくするための栄養が十分ではないので、人間が管理して粉ミルクを足しています。
親にはやらない配合飼料も仔やぎには供与します。
種付け後の晩秋まで配合飼料で、その後は親と同じ飼料です。
全ては身体を大きくするためです。
小さい山羊のお産はかなりつらそうです。
事故がおこる可能性も上がります。
それを避ける為の完全分離であり、栄養を計算された配合飼料の供与なのです。
年に1回の大イベント。育ての親ですが毎年発見があり、成長中です。
イメージと実際
『山羊チーズは臭い』
『山羊チーズはちょっと…』
という方はかなりいらっしゃるとわかってます。
山羊チーズを一番初めに食べたのは牛のチーズを始めた頃で、クロタンでした。
その独特の薫りと食感の違いを面白く思いました。
海外の山羊チーズはAOCを取得したりしている良いものが輸入されています。そしてその殆どは無殺菌乳を使っているので匂いが際立ちます。
自分で作るまでは山羊とはクセがあるものだし、それが正しいものだとなんとなく思っていました。
さて、作り始めると独特のクセがほとんどありません。
去年はフレッシュチーズだけだったのですが、あまりクセを感じない食べやすいものができました。
『クセはどこにいった?』
今まで食べてきたイメージとの違いにかなりなやみました。
『これでいいのか?』
『山羊の個性がないと言われ、敬遠されるのでは?』
と、色々もやもやと考えました。
ウチのチーズの結論
確かに山羊チーズを食べ慣れてる方はあの独特のクセが好きなので、もの足りないかもしれません。
しかし、苦手な方や食べたことのない方には取っつきやすいと思います。
あえてヨーロッパのものを目指すことはしません。
ウチのミルクの味を活かしたチーズを作っていこうと思います。
チーズの種類なんかの話はまた次の機会にします。
因みにクセが全く無いわけではなく、かなり少ない感じです。
チーズ考
チーズについては、五里霧中、というよりは、手が届く範囲でしか語れません。
幼い時からの記憶をたどると、レンガみたいなプロセスチーズを厚目に切ってパンにのせて熱々を食べたり、街のパン屋さんで買うチーズがのったパンのすみっこのカリカリしたところが好きだったりしました。
チーズ鱈やチーズおかき、ロッピーチーズもよく食べました。
それが個人的なチーズの文化でした。
身近にチーズがある生活をしていた訳でもない僕はチーズについての正解が解りません。
かなり食べた方だとは思いますが、確固たる正解が出ていません。
そんな中で一つ思っていることがあります。
『チーズは旅するミルク』じゃないか?ということです。
発酵全部に言えるのは生まれた風土の中で保存がきくということだと思います。
農産物には収穫期があり、取れ過ぎたものを捨てずに食べるという人間の思いから来ていて、結果、そのものがさらに美味しくなっただけで、ある意味、食い意地の賜物だと思います。
始まりは牛のチーズを作ることでした。
なんでも初めは模倣から始まります。
『まなぶことはまねること』と昔、映像の仕事に入るきっかけになった人に教えてもらいました。
まねて作って、考えて、また作って、を繰り返しました。
チーズ作りは色々な中断を経て、足掛け6年ほどになります。
こんな短い期間で答えが出ないのは当然といえば当然です。
だってたった6年ですもん。
離乳食からチーズを食べていた人達とは年季が違います。
だから、今年も作り続けていきます。
ま、答えはまだまだ出そうにないです。
不惑も半ばですが、今年も惑いながら有惑(誘惑)のチーズを作っていきます。
明日明後日が出産予定日の山羊が3頭。
そろそろ産まれますヨォ